自分がこれまで生活してきた場所を離れ、新しい環境に飛び込み、新たな仲間と挑戦をする地域みらい留学。この留学の仕組みには、留学する生徒(以下、留学生)もいれば、留学してくる生徒を迎える側の生徒(以下、地元生)もいます。島根県の離島にある隠岐の島町で生まれ、中学校まで隠岐の島町で育った澤みちるさん(以下、みちるさん)は、そのまま地元の島根県立隠岐高等学校(以下、隠岐高校)に進学。中学校までは同じ島で育った同級生たちと学校生活を送ってきたみちるさん。留学生を受け入れる隠岐高校に進学すると、島の外で育った生徒とも一緒に高校生活を送ることになります。現在、高校2年生になったみちるさんは、当時どのような思いで、地元の生徒として留学生を受け入れたのでしょうか。実際にお話を伺ってみました。
島根県の離島に位置する隠岐の島町(通称:島後)
みちるさん 中学校自体は、同級生が14名、全校生徒は30名程度の小さな中学校でした。私自身は結構活発な性格で。隠岐ならではの遊び方をよくしてました。海で遊んだり、釣りをしたり、山の奥に登ったり。勉強とかはあんまり得意じゃなかったし、結構喧嘩っ早くて、男の子と取っ組み合いの喧嘩もしてましたね(笑)
みちるさん 高校進学時に、島を出て松江市や出雲市の高校に行く生徒もいます。私自身は、親元を離れて、知り合いのいない場所に行くことに不安を感じ、隠岐の島町内での進学をしようと考たんです。島内には、隠岐高校のほかに隠岐水産高校があります。まだ、将来のことが決められずにいて、幅広い選択肢を持っておきたいと思い、普通科の隠岐高校に入ろうと決めました。どちらの高校も、留学生を受け入れている高校だということは中学の時から知っていました。
隠岐高校の写真部で活動するみちるさん
みちるさん 留学生がいることはわかっていたものの、東京から来た人がいることを目の当たりにして改めて驚きました。便利なものがいっぱいある場所から、交通も不便な田舎に来たことに「何で隠岐に…?」と疑問を抱いたことをよく覚えています。
それと同時に漠然とした不安も生まれました。小規模の中学校にいたので、急にコミュニティのサイズが大きくなり、友達ができないんじゃないかと感じたんです。
みちるさん 私の前に座っていた生徒がたまたま留学生で。話をするようになったことが最初のきっかけです。はじめは気まずさもあったんですけど、自然と一緒にいる時間が長くなり、馴染んでいきました。その留学生との交流を通じて、他の留学生や他校から来た地元生とも仲良くなれたと思います。
みちるさん まず、地域の方も留学生が隠岐に来てくれることに対して、凄くウェルカムな雰囲気はあると感じています。特にご年配の方は「隠岐に来てくれてありがとう」「隠岐を選んでくれてありがとう」という気持ちが強いんじゃないかなって。良い意味で、留学生も“普通の高校生”として扱われていて、特別扱いはありません。島の一員として、日々交流しています。
ユネスコ世界ジオパークに指定されている隠岐の絶景
みちるさん 以前は何かをやることに不安を感じることが多かったのですが、遠くから隠岐に来て、生活している留学生を見て、「私も何かできたらな」と思うようになりました。島外に出ることが怖いと思っていた自分がちっちゃく見えてしまいましたね(笑)外の世界を見てこなかったけど、島外の人と生活することで、外のことを知ってみたり、知らないことをやってみようと思うようになりました。
みちるさん 留学生は挑戦する意識がすごくて。高校生アンバサダー活動も、留学生の友人に誘われたことが参加のきっかけです。誘われていなかったら、参加していなかったんじゃないかなと思います。留学生たちが、挑戦するチャンスとそのチャンスに対して踏み出す勇気をくれたんです。
教室内での日常の風景(みちるさんは真ん中)
みちるさん 高校卒業後は、進学のため島を出ることになります。中学生の時までは、時が来れば仕方なく島を出るんだろうといった感覚でした。でも、今は違う。自分の意志で「島を出て、島の外を知ってみたい。外から隠岐を見てみたい」と思うようになったんです。私たちにとっては、当たり前だった隠岐での暮らしを、留学生が「最高だ」って言ってくれて。隠岐が素晴らしい場所だということを留学生が教えてくれました。島の外に一度出ることになるとは思いますが、外を見て、外から隠岐のことを知って、またいつか帰ってこられたらなと思います。将来は、留学生のように誰かが隠岐に来てくれるような活動を、陰で支えられるような存在になりたいんです。
留学生と一緒に取材を受けるみちるさん(写真右)
留学を考える中学生の皆さんの中には、「地元の人たちと仲良くできるかな」と不安を抱えている方も多いことでしょう。でも、それは受け入れる側も同じなんです。新しい高校生活を迎えるときに期待と不安が入り混じるのは、留学生だって地元生だってお互い様。勇気を持って踏み出して、そして勇気を振り絞って、前の席の人に声をかけてみてください。内心ドキドキしている地元生が、きっと楽しみにそんな瞬間を待ってくれています。
皆さんの存在は、地元生や地域の人たちに刺激を与え、その土地の魅力に気付かせてあげることだってできるんです。外から飛び込むからこそ、その土地のことを知らないからこそ、その地域で輝くことがきっとできると今回の取材で強く感じました。
(取材・編集:地域・教育魅力化プラットフォーム 小谷祐介)
高校生アンバサダーとは、高校生視点で地域みらい留学の魅力を発信する活動を行う生徒たちを指します。地域みらい留学事務局が全国の地域みらい留学を受け入れる高校の生徒から10名を公式に認定しています。
9名が留学生の中、みちるさんは唯一の地元生として、アンバサダー活動に参加。「留学生に刺激を受けたから、地域みらい留学や隠岐の面白さをもっと伝えたい」と活動に取り組んでくれています。彼女の運用するInstagramアカウントも是非チェックしてみてくださいね。
☞みちるさんの公式Instagramアカウント(@amb_cmirai_miti)はこちら
☞地域みらい留学の公式Instagramアカウント(@c_mirairyugaku)はこちら
島根県立隠岐高等学校(島根県 隠岐の島町)
☞この学校の詳細情報ページはこちら