高校入試における“第1志望の不合格”は、誰にとっても大きな出来事です。けれども、それは「終わり」ではなく、「もうひとつの始まり」でもあります。地域みらい留学では、第1志望で不合格になっても「一般入試」や「二次募集」などで、第2志望を併願しておくことで、新たな学校を選び直すチャンスがあります。
愛知県出身・東京都江東区育ちの石原憧真さん(以下、憧真さん)は、島根県立隠岐島前高等学校(以下、隠岐島前)を受検し、残念ながら不合格に。しかしその後、高知県のA日程入試を通じて“越境”し、第2志望から自分の未来を切り拓きました。現在は関西学院大学に通っています。中学3年の秋に第2志望として高知県立梼原(ゆすはら)高等学校(以下、梼原)を見つけ、結果的に「最高の高校生活」を送ることに。どのように準備し、入試を乗り越えたのかを伺いました。

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Profile|石原 憧真(いしはら しょうま)
※本記事においては、高知県のA日程入試を「一般入試」と表現している箇所がございます。
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本インタビューは、令和4年度入学者選抜要項に基づく入試当時の内容です。現在の入試制度とは異なる点もありますので、最新の情報をご確認ください。
─地域みらい留学を知ったきっかけは?
憧真さん: 小学校高学年のときに、父が地域みらい留学の冊子を見せてくれたのがきっかけです。「こういう高校の行き方もあるんだよ」と言われ、興味を持ちました。そこから家族で制度を調べ、「高校では外の世界に出てみたい」と思うようになりました。
周囲では私立中学受験の熱が高かったのですが、公立中学校への進学を選択。進学後の中学校では生徒会副会長を務めながらも、周囲に流されることもなく、「自分の進路は自分で選びたい」という意識を強くあったように思います。
─第1志望を決めたのは?
憧真さん: 中学1年のときには、すでに隠岐島前を第1志望に決めていました。親と一緒に調べる中で、「夢探究」の授業内容や海に囲まれた環境に惹かれたんです。中学2年からは入試に向けて本格的に準備を始め、現地見学に。都立高校対策のために通っていた進学塾もこのタイミングでやめました。
当時の中学校の先生は地域みらい留学について詳しくはありませんでしたが、面接練習や小論文の添削など、親身にサポートしてくださいました。中2の早い段階で先生に相談していたことが、良い支援を得ることにつながったのだと思います。

─併願先や第2志望校を探し始めたのはいつ頃ですか?
憧真さん: 中学3年の夏から秋にかけてです。隠岐島前は倍率が高く、「落ちる可能性もある」と家族で話すようになりました。
その際、島根県の入試を受けた後でも入試を受けられる県を調べ、「もし不合格でも、ここなら楽しく過ごせそうだ」と思える学校をもう1校探すことにしました。調べていくうちに、高知県が隠岐島前の入試後でもA日程入試(※1)を実施していることを知りました。
いくつかの高知県の学校を見学した中で、最終的に梼原と出会いました。新しい寮や、先生・生徒の雰囲気が印象的で、「ここでなら頑張れそう」と感じたことが決め手でした。
─第1志望の入試結果を聞いたときは?
憧真さん: 入試自体には手応えがあったので、「受かった」と思っていました。でも、結果は不合格。悔しさや悲しさよりも、「えっ、落ちたの?」という驚きのほうが大きかったです。落ち込む間もなく、「次の準備をしなきゃ」とすぐに切り替えました。
隠岐島前の発表が1月中下旬ごろ、梼原高校のA日程入試の出願期間はその直後。入試まではわずか1か月ほどしかありません(※2)。中学校の先生たちが書類を整え、面接練習も続けてくれました。家族も情報を集めて支えてくれたと思います。
筆記試験と面接の両方を集中して対策し、短期間で臨んだ結果、無事に合格。隠岐島前の経験があったことで少し不安もありましたが、合格できてほっとしました。
中学1年〜2年にかけて塾に通っていたおかげで基礎学力が身についていたことも、短期間での合格につながった要因のひとつだと思います。

─梼原での高校生活はどうでしたか?
憧真さん: クラスは20人ほどの少人数で、すぐに友達ができました。県外生も地元の生徒も関係なく仲が良く、距離の近い関係ができていたと思います。東京では味わえなかった“人とのつながり”を日々実感していましたね。
地域との関わりも多く、地元の高齢者カフェでお手伝いをしたり、町の行事に参加したりするうちに、「福祉」や「地域づくり」に興味を持つようになりました。それがきっかけで関西学院大学の人間福祉学部を志望するようになったんです。
関西学院大学には指定校推薦で進学し、現在は「地域と人をつなぐ」学びを続けています。梼原は少人数の学校なので、指定校推薦も友人同士で枠を争うことなく進路を決定できました。これは地域みらい留学校ならではの良さだと思います。
─今、改めて高校入試を振り返ってどう思いますか?
憧真さん: 結果的に、梼原で良かったと思っています。隠岐島前に行っていたら、今の大学や友達には出会えていなかった。梼原に行ったからこそ、最高の仲間たちと出会い、最高の経験ができました。
「落ちて良かった」とまでは言いませんが、「第1志望に落ちたことで、違う道を選ぶことができ、今の自分がある」という感覚です。どんな道でも、自分で選んで進めば、それが正解になると思います。

─これから第2志望・併願を考える後輩たちへ
憧真さん: 第1志望に届かなくても、それで終わりじゃありません。「どこへ行くか」より「どう生きるか」。その思いで一歩を踏み出してほしいです。
第1志望に落ちることは、決して失敗ではありません。むしろ、それは新しい自分と出会うチャンスです。第2志望であっても、自分の意志で選び取れば、その先にはきっと、新しい景色と成長した自分が待っています。「ここなら第2志望でも行きたい」と思える学校を事前に見つけておくことが大切ですね。
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(※1)高知県のA日程入試:いわゆる一般入試と位置づけられる入試日程。高知県の場合、例年B日程入試という、いわゆる二次募集にあたる入試の実施もあります
(※2)各県の入試日程や要項については、各都道府県教育委員会により毎年更新されます。必ずしも、島根県の入試を受けた後に高知県の入試を受けることができるというわけではありません。必ずご自身の第1志望と第2志望の県の入試要項をご確認ください
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