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体験談「大学に行くのが当たり前」だと思ってた。でも私は“こっち”を選んだ――直感で選ぶ18歳の生き方

「大学に行くのが当たり前」だと思ってた。でも私は“こっち”を選んだ――直感で選ぶ18歳の生き方

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周囲が当たり前のように大学進学の話ばかりするなか、心のどこかで「これでいいのかな」と感じていた。 神奈川県で育ち、島根県の島根県立隠岐島前高等学校(以下、隠岐島前)へ“地域みらい留学”。 2022年に卒業後、「大学進学」ではなく「喜界島で働く」という道を選んだのは、当時18歳の市川萌笑さん(以下、萌笑さん)。 現在21歳。サンゴ留学のコーディネーターとして、高校生たちの日常や挑戦を支える日々を送っている。 誰かの正解じゃなくて、自分の“積極的な選択”の先には何があったのか。 私たちが見つめたのは、社会が決めたレールではなく、萌笑さん自身が直感的に選び歩んできた先にある何かだった。皆さんにもきっと何かグサりとくるものがあるのではないだろうか。

  

🌟この記事はこんな人に読んでほしい

  • まわりがみんな大学進学だから自分もそうするべきだと思っている中高生
  • 偏差値偏重の社会風潮にもやもやしている中高生
  • この先、進学以外の選択肢を検討してみたい中学生や親子 

  

   

「このままでいいの?」に気づかせてくれた、島の高校の一言

地元の高校の話を聞いていても、どこか違和感があった。

そんな中学3年のとき、たまたま「地域みらい留学」の文字の入ったパンフレットを見つける。

「国内留学?なにそれ?留学って海外に行くことじゃないの?」興味を惹かれた。

 

半信半疑で参加した説明会。

そこで出会った隠岐島前の先生の言葉が胸に残った。

 

「あなたは、3年後、どんな自分でいたいですか?」

 

ビビッと電流が走ったような気がした。

学力や偏差値よりも、進路実績やカリキュラムの話よりも、「どう生きたいか」から始まる考え方。

 

「なんとなく同じ偏差値帯の人が集まった高校に行って、そしてなんとなく大学へ、って流れが当たり前みたいな空気がありました。でも隠岐島前の方のその問いを聞いたとき、“自分で選ぶってこういうことかも”って思ったんです」

 

一般的な高校進学のレールから少しだけ外れて、島へ渡った私の新しい生き方がはじまった瞬間。

 

 

「リーダーなんて向いてない」と思ってた私がイベントを企画した日

島の自然、人の距離感、そして寮での共同生活。

最初は不安のほうが大きかったけれど、2年、3年と過ごすうちに、少しずつ「やってみたい」という気持ちが芽生え始めた。

 

記憶に鮮明に残っている挑戦は、「カルマキッチン」というイベント。

“あなたの食事は無料。その代わり、次の誰かのために恩送りをする”という仕組み。

コロナ禍で色んな葛藤もあった。

以前の私なら、多分「無理」って言っていた。

でも、背中を押してくれる大人がいた。

「いいじゃん、やってみなよ」って。

企画や交渉を通して得たのは、責任感と“自分もやればできるんだ”という実感。

私なりにプロジェクトリーダーをやり切った。

 

島の生活の中では、うまくいかなかったことももちろんある。

私自身の誕生日をお祝いしてもらうための外出予定を申請ミスで逃してしまった。

準備してくれた人たちの顔を思い浮かべるとやり切れない思いに駆られた。

それでも島の人たちは“また祝おうね”って言ってくれて。

嬉しかったし、悔しかった。

忘れられない失敗。

 

人と暮らす中で、人の思いと正面から向き合う中で、言葉の重みや感謝の伝え方をこの身で学んだ。

 

 

「別の道」にビビッときた——“大学進学じゃない進路”を選んだ理由

高校3年の進路面談。

まわりは当然のように大学志望。

「なんとなく、私もそうなるのかな」と思っていた。

 

今後の生き方に迷った。

そんなあるとき、周囲の大人にこう聞いてまわってみた。

「あなたにとって、“仕事”って何ですか?」

今思い返せば、乱暴な質問だ。

 

でも、ある人がこう返してくれた。

「仕事って思ってないんだ。遊びだと思っている。遊びと仕事の境目を無くしたいと思っているんだよね」

その言葉に、ビビッときた。

仕事ってそんなふうに考えていいんだって。

 

大学進学がすべてじゃない。

私は別の道でこれからの生き方を考えていきたい。

 

ちょうどその頃、SNSで偶然見かけたのが「喜界島の地域おこし協力隊」の募集。

“サンゴ留学を一緒に育ててくれる人を探しています”

副寮長の経験もあったし、「この3年間の経験をそのまま次につなげたい」って。

これだと思った。

隠岐島前の先生も「なんで喜界島に行きたいんだ」「そこで何がしたいんだ」と真剣に向き合ってくれた。

 

 

社会に出て気づいた、“伝えること”の難しさと意味

18歳で社会人に。

喜界島で最年少の地域おこし協力隊として、寮の立ち上げと運営に携わる。

 

最初は「若いのにえらいね」と言われることもあった一方で、「まあ若いからしょうがないよね」と流されることもあったのも事実。

やりたいことに丸1日向き合うことができる喜びとイチイチ許可をとらないといけないことへのモヤモヤ。

自分の思いを伝えることの難しさを痛感する。

当たり前の社会の基本に打ちのめされた。

少しずつ自分の思いを言葉にすることから逃げている自分もいた。

 

思い悩んでいた時に上司が声をかけてくれた。

「仕事なんだから、仕事だからこそ、やりたいことならちゃんとぶつかってみなよ」

胸にグサッと刺さった。

今でも心の奥底に残っている言葉。

やりたいなら、ぶつからなきゃ。

その一言に背中を押され、少しずつ自分の考えを言葉にするようになった。

 

自分のやりたいことも少しずつ実現に繋がるように。

今では、高校生と一緒に寮で暮らしながら、彼らの小さな変化を見守っている。

 

あるとき、サンゴ留学1期生の子がふいにこう言った。

「私、こういうこと、やってみたいんだよね」

それを聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。

やってみたいって言葉が出てきたことが、本当に嬉しくて、感慨深い。

 

今では、高校生たちが自分の言葉で思いを語り始める瞬間に、心からの喜びを感じている。

 

  

私自身の信じる道を選んだその先に見えてきたもの

協力隊の任期が終わったこの3月。

まだまだこの島でやりたいことがあると喜界島に残ることを決めた。

現在は役場から委託を受けて「サンゴ留学」の寮担当コーディネーターを続けている。

少なくとも1期生が卒業するまで、見届けたい。

 

そして今、もうひとつの夢も芽生えている。

——喜界島の植物でアクセサリーをつくること

——誰かと一緒に手づくり体験ができる小さなお店を開くこと

まだまだこれから。

 

「“萌笑っぽいね”って言ってもらえるのが嬉しいんです。そう言ってもらえる自分でいたいなって」

 

 

💬 進路に悩む中学生・保護者の方へ

「大学に行くのが当たり前」って、私も思ってました。

でも私は、“やってみたい”を選びました。

この道を選んで良かったなとも思います。

就職も進学も、どちらが正しいかなんて決まっていない。

大事なのは、“自分が納得できるかどうか”。

地域みらい留学は、その“納得”に出会える場所です。

あなたが選んだ道を、私は心から応援しています。

 

 

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📌 市川 萌笑(いちかわ もえ)さん プロフィール

• 神奈川県相模原市出身

• 島根県立隠岐島前高校 卒業(2022年3月)

• 喜界島・地域おこし協力隊(2022年4月〜2025年3月)

• 現在は町からの委託で寮担当コーディネーターとして活動

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