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2019年7月6日
イベント
【地域みらい留学フェスタ2019】開催レポート~高校生・大学生編~
高校3年間、住み慣れた町を離れて、様々な地域に「留学」する取り組みが全国に広がりつつある。
中学時代までとは別の地域の高校へと留学している生徒の数は現在、約350人。
「地域みらい留学」と呼ばれる取り組みに、26都道府県から55の高校が参加する。
だが、高校時代に「わざわざ地域へ留学する」のはなぜか。
地域に留学することを通じて得られる力とは?
そんな疑問に答えるイベント「地域みらい留学フェスタ2019」が6月29日、東京・渋谷で開催された。
「地域に留学する」。その選択を正解にするために、必要な覚悟とは。
(取材・文:千葉 雄登)
「地域みらい留学フェスタ」を主催する「地域・教育魅力化プラットフォーム」の代表・水谷智之さんはこのイベントを「学校を見るだけでなく、自分の人生の選択、自分の人生を考える時間として使ってほしい」と呼びかけた。
留学した先では時に理不尽なことも起きる。
そうしたことも乗り越えられるのは、自分で高校時代の3年間を地域で過ごすと決めた人だと強調する。
東京都出身で現在、広島県立大崎海星高校に通っている細川真住さんは、小学5〜6年生のとき山村留学生として甑島で過ごした。
その後、中学校は地元の学校へ通ったが、高校で再び地域へ飛び出すことを決める。
進学先を選ぶにあたって複数の高校を見学したと明かす。
『今通っている大崎海星高校だけでなく沖縄の久米島高校や岩手の葛巻高校も見学させてもらいました。
高校にも自分と合う・合わないという相性があると思うんです。
3つの高校を見学した上で、私は海の近くで学びたいなと思い今の高校を選びました。』

一部の高校に人気が集中しやすい側面もある。
だが、誰かにとって良い選択が必ずしも自分にとって良い選択だとは限らない。
大崎海星高校は1学年1クラス。
クラス替えが3年間ないことへの戸惑いも当初はあった。
だが、今では3年間を通じた結束力の強さを実感していると笑顔で語った。
大崎海星高校に進学することによって、どのような変化が生まれたのだろうか。
『大崎海星高校と、高校がある大崎上島の魅力を、島内はもちろん島外へと発信する<みりょく郵便局>という部活に所属しています。
そこでは島について、高校についてプレゼンをさせていただく機会が多いんです。
もともと人前で話すことは嫌いではありません。
でも、この3年間を通じて自分の言葉で喋ることができるようになったと感じています。』
島に来るまで、身の回りにいる大人は親か先生だけだった。
だが、島で寮生活を送る中で関わる大人は実に多様だ。
様々な大人たちが高校生のやりたいことを応援し、支えてくれる環境がそこにはある。
『色々な人の話を聞くことで、様々な職業を知ることもできますし、何より自分の考えが深まりました。
価値観が広がったと感じます。
迷った時は大人の人に相談して、意見を聞くようになりましたね。』
細川さんは間もなく受験を控えている。
大学受験をすることは島へ留学した時点で父親と約束していた。
島での経験が進路を選ぶ上で1つの指針となっている。
『まだ学部選びは迷っていますが、せっかくなので地域に関わることのできる学部で学べたら。
あとは高校でニュージーランドに2週間、セブ島に1ヶ月留学させてもらうこともできたので大学生活の中でも海外へいくことができたらと考えています。』
『地域みらい留学は一つの選択肢としてすごくありだと思うんですよ。
でも、行っただけで何かあるわけではない。
なぜ行きたいのか、ということを考えた上で選ばないと充実した時間を過ごせなくなってしまう、とも思います。』
こう語るのは、今年の3月に島根県立隠岐島前高校を卒業し、慶応義塾大学へ進学した前田陽汰さんだ。
海士町という地域活性化が盛んな地域で3年間を過ごした今、島を存続させていくために、活性化以外のアプローチを示すことができないかと考えている。

(写真右が前田さん)
もともと島への留学を考えたきっかけは、大好きな釣りが存分にできる環境だったから。
周囲を海に囲まれた高校を探し、隠岐島前高校を見つけた。
実際に島へ足を運び、島のアットホームな雰囲気にも魅了された。
進学後は釣りだけでなく、畑の手伝いや民宿の手伝いなど想像以上に様々な経験を積むことができたと振り返る。
地域を歩いて誰かに話しかければ、二言目には「お茶でも飲んでって」「にーちゃん、(畑仕事)手伝って」という言葉が飛び出す。
気付けば、島の民宿の手伝いや漁の手伝い、米作りの手伝い…と様々な体験を積んでいた。
そこには行く前に地域へ留学することに対して抱いていたイメージと「良い意味でギャップがあった」。
特に大きな影響を受けたのは寮生活だ。
『全国、色々な場所から人が集まっている。
だから寮での生活は楽しかったですね。友達というよりも、寮の仲間、一つ屋根の下で暮らす家族という距離感で。
寮長をやっていたんですけど、価値観がぶつかることもしょっちゅう起こるんです。
「俺はこうしたい」「いや、僕はこうしたい」みたいなどうしようもないことばかりで(笑)。
みんなが生活しやすいように、どうしたらいいのかを真剣に考えるきっかけになった体験でした。』
前田さんは、決して積極的なタイプではなかったという。
だが、あえて寮長を務めることを選んだ。その理由とは?
『島に行くと、受け身でいては何も起きないと気付いたからですね。
受け身でいると、ただ時間だけが過ぎていってしまう。
でも、何かをやろうとすれば、すぐにできる環境でもあるんです。
やりたいことの種があらゆるところに蒔かれているような環境だったからこそ、チャレンジしてみようと思ったのかもしれません。』
「地域みらい留学」をする、という選択の先に待ち受けているのは決して「素敵な竜宮城」ではないのだと水谷さんも強調する。
地域みらい留学をしたからといって、すぐに何かが手に入るわけではない。
だが手を伸ばせば自分を成長させてくれる体験で溢れた環境が、地域には広がっている。
だからこそ、まずは自分で納得のいく選択をすることが何よりも重要だ。
中学時代までとは別の地域の高校へと留学している生徒の数は現在、約350人。
「地域みらい留学」と呼ばれる取り組みに、26都道府県から55の高校が参加する。
だが、高校時代に「わざわざ地域へ留学する」のはなぜか。
地域に留学することを通じて得られる力とは?
そんな疑問に答えるイベント「地域みらい留学フェスタ2019」が6月29日、東京・渋谷で開催された。
「地域に留学する」。その選択を正解にするために、必要な覚悟とは。
(取材・文:千葉 雄登)
~色々な大人と出会い、関わることで「自分の言葉で喋れる」ように~
「地域みらい留学フェスタ」を主催する「地域・教育魅力化プラットフォーム」の代表・水谷智之さんはこのイベントを「学校を見るだけでなく、自分の人生の選択、自分の人生を考える時間として使ってほしい」と呼びかけた。
留学した先では時に理不尽なことも起きる。
そうしたことも乗り越えられるのは、自分で高校時代の3年間を地域で過ごすと決めた人だと強調する。
東京都出身で現在、広島県立大崎海星高校に通っている細川真住さんは、小学5〜6年生のとき山村留学生として甑島で過ごした。
その後、中学校は地元の学校へ通ったが、高校で再び地域へ飛び出すことを決める。
進学先を選ぶにあたって複数の高校を見学したと明かす。
『今通っている大崎海星高校だけでなく沖縄の久米島高校や岩手の葛巻高校も見学させてもらいました。
高校にも自分と合う・合わないという相性があると思うんです。
3つの高校を見学した上で、私は海の近くで学びたいなと思い今の高校を選びました。』

一部の高校に人気が集中しやすい側面もある。
だが、誰かにとって良い選択が必ずしも自分にとって良い選択だとは限らない。
大崎海星高校は1学年1クラス。
クラス替えが3年間ないことへの戸惑いも当初はあった。
だが、今では3年間を通じた結束力の強さを実感していると笑顔で語った。
大崎海星高校に進学することによって、どのような変化が生まれたのだろうか。
『大崎海星高校と、高校がある大崎上島の魅力を、島内はもちろん島外へと発信する<みりょく郵便局>という部活に所属しています。
そこでは島について、高校についてプレゼンをさせていただく機会が多いんです。
もともと人前で話すことは嫌いではありません。
でも、この3年間を通じて自分の言葉で喋ることができるようになったと感じています。』
島に来るまで、身の回りにいる大人は親か先生だけだった。
だが、島で寮生活を送る中で関わる大人は実に多様だ。
様々な大人たちが高校生のやりたいことを応援し、支えてくれる環境がそこにはある。
『色々な人の話を聞くことで、様々な職業を知ることもできますし、何より自分の考えが深まりました。
価値観が広がったと感じます。
迷った時は大人の人に相談して、意見を聞くようになりましたね。』
細川さんは間もなく受験を控えている。
大学受験をすることは島へ留学した時点で父親と約束していた。
島での経験が進路を選ぶ上で1つの指針となっている。
『まだ学部選びは迷っていますが、せっかくなので地域に関わることのできる学部で学べたら。
あとは高校でニュージーランドに2週間、セブ島に1ヶ月留学させてもらうこともできたので大学生活の中でも海外へいくことができたらと考えています。』
~「受け身でいては何も起きない」。その気付きが、自分を変えた。~
『地域みらい留学は一つの選択肢としてすごくありだと思うんですよ。
でも、行っただけで何かあるわけではない。
なぜ行きたいのか、ということを考えた上で選ばないと充実した時間を過ごせなくなってしまう、とも思います。』
こう語るのは、今年の3月に島根県立隠岐島前高校を卒業し、慶応義塾大学へ進学した前田陽汰さんだ。
海士町という地域活性化が盛んな地域で3年間を過ごした今、島を存続させていくために、活性化以外のアプローチを示すことができないかと考えている。

(写真右が前田さん)
もともと島への留学を考えたきっかけは、大好きな釣りが存分にできる環境だったから。
周囲を海に囲まれた高校を探し、隠岐島前高校を見つけた。
実際に島へ足を運び、島のアットホームな雰囲気にも魅了された。
進学後は釣りだけでなく、畑の手伝いや民宿の手伝いなど想像以上に様々な経験を積むことができたと振り返る。
地域を歩いて誰かに話しかければ、二言目には「お茶でも飲んでって」「にーちゃん、(畑仕事)手伝って」という言葉が飛び出す。
気付けば、島の民宿の手伝いや漁の手伝い、米作りの手伝い…と様々な体験を積んでいた。
そこには行く前に地域へ留学することに対して抱いていたイメージと「良い意味でギャップがあった」。
特に大きな影響を受けたのは寮生活だ。
『全国、色々な場所から人が集まっている。
だから寮での生活は楽しかったですね。友達というよりも、寮の仲間、一つ屋根の下で暮らす家族という距離感で。
寮長をやっていたんですけど、価値観がぶつかることもしょっちゅう起こるんです。
「俺はこうしたい」「いや、僕はこうしたい」みたいなどうしようもないことばかりで(笑)。
みんなが生活しやすいように、どうしたらいいのかを真剣に考えるきっかけになった体験でした。』
前田さんは、決して積極的なタイプではなかったという。
だが、あえて寮長を務めることを選んだ。その理由とは?
『島に行くと、受け身でいては何も起きないと気付いたからですね。
受け身でいると、ただ時間だけが過ぎていってしまう。
でも、何かをやろうとすれば、すぐにできる環境でもあるんです。
やりたいことの種があらゆるところに蒔かれているような環境だったからこそ、チャレンジしてみようと思ったのかもしれません。』
「地域みらい留学」をする、という選択の先に待ち受けているのは決して「素敵な竜宮城」ではないのだと水谷さんも強調する。
地域みらい留学をしたからといって、すぐに何かが手に入るわけではない。
だが手を伸ばせば自分を成長させてくれる体験で溢れた環境が、地域には広がっている。
だからこそ、まずは自分で納得のいく選択をすることが何よりも重要だ。
2019年7月6日
イベント